東大元教授ら接待問題 初公判で露呈した“王様ぶり”と従属関係の実態
東京大学大学院の元教授らをめぐる接待問題が、ついに法廷で明るみに出た。贈賄の罪に問われている一般社団法人「日本化粧品協会」代表理事の引地功一被告(52)の初公判が4月23日、東京地裁で開かれ、その中で浮かび上がったのは、関係者が口をそろえる元教授らの強い影響力と、いびつな上下関係だった。
起訴状によると、引地被告は共同研究の便宜を受ける見返りとして、元教授の佐藤伸一被告(62)と元特任准教授の吉崎歩被告(46)に対し、高級クラブや風俗店で総額およそ380万円にのぼる接待を提供。引地被告は法廷で「おおむね間違いありません」と認めつつ、「東京大学という権威の前では断ることができなかった」と胸の内を明かした。
背景にあったのは、研究の継続を巡る強いプレッシャーだった。共同研究の責任者だった佐藤被告の意向に逆らえば、プロジェクトが打ち切られる可能性があると感じた引地被告は、次第に従属的な立場に追い込まれていったという。吉崎被告からは「軌道に乗るまで月に2回は打ち合わせを」と持ちかけられ、そのたびに高級飲食店からクラブへと流れる接待が常態化していった。
さらに接待の内容はエスカレートしていく。海外視察での経験をきっかけに、より過激な接待を求める声が上がり、引地被告は風俗店の利用を提案するに至ったとされる。結果として、佐藤被告は高級クラブ22回(約135万円)と風俗店6回(約47万円)、吉崎被告はクラブ23回(約145万円)と風俗店7回(約55万円)の接待を受けていたことが明らかになった。
金銭面での負担も大きかった。年間3000万円の出資に加え、追加の資金提供も求められ、さらには佐藤被告の娘を研究所で雇用することにもなった。引地被告は証言で「自分の研究とは関係のない業務も抱え、まるでATMのように扱われた」と語り、苦しい胸中を吐露した。
それでも関係を断ち切れなかった理由は、これまでの投資が無駄になることへの恐れだった。しかし状況は2024年8月に一変する。打ち合わせの席で佐藤被告から「殺すよ」などと脅されたことで、引地被告は警察に相談し、事件が発覚した。
同日には吉崎被告の初公判も行われ、起訴内容については「言いたいことはありません」と認めた。一方で、医学部特有の上下関係の強さに触れ、「上司の言うことは強い権限を持つ」と説明。接待を受けた理由についても「スポンサーの機嫌を損ねてはいけないと思った」と主張した。
また、佐藤被告不在時にも単独で接待を受けていたことが明らかとなり、引地被告との関係については「愚痴を言い合える間柄だった」と語る場面もあった。佐藤被告への思いを問われると、「自らを律する方であってほしかった」と言葉を選びながら述べた。
検察側は両被告に懲役1年2月を求刑。判決は吉崎被告が22日、引地被告が26日にそれぞれ言い渡される予定で、今後の行方に注目が集まっている。